日本酒が飲めなくなったのである、もう何年も前から。
正確に言えば、飲めないのではない。
飲むと次の日が辛すぎて、駄目になり過ぎて、人としてどうよ?という状態になってしまい、だから自粛しているのだ。
しかし“美吟微吟”は別格。
なんでかこの日本酒だけは、私が二日酔いにならない貴重な品である。
そして勿論、旨いのである。
母が新潟出身で家には常に名酒が置かれていたし、またただ単に、私が飲兵衛な所為でもあるのだが、若い頃から随分といろいろな種類の日本酒に親しんできた。
安い酒、高い酒、ポピュラーな酒、巷には知られていない酒、好みの酒、あるいはそうでないもの。
どれもが忘れがたいし、酒にまつわる様々な思い出もあるーーその大抵は激しい頭痛が伴うものであるがーー。
そして今、私のお気に入り日本酒ベスト1は“美吟微吟”である。
なので、よく贈答に使わせて頂いている。
最近は自分の為には買っていない。
なにしろ日本酒自粛令を出しているのだ。
それでも「旨かった!」という記憶だけは鮮明に残っている。
クセが無くてサラリとしているが、コクがあった、ように思う。
記憶が霧の彼方に霞んで消え去る前に、また自分の為にも買ってみよう。
美酒である。