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ひねもす のたりのたりかな

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父が『赤い鳥さし絵賞』を受賞いたしました

建具職人の千太郎 (くもんの児童文学)

岩崎 京子 / くもん出版



児童文学の賞のひとつであり、小峰書店にある赤い鳥の会が主催する赤い鳥3賞(赤い鳥文学賞・新美南吉児童文学賞・赤い鳥さし絵賞)。
その中の “赤い鳥さし絵賞” を、父、田代三善が挿絵を描いた 『建具職人の千太郎』(岩崎京子氏著/くもん出版刊) において頂きました。
“赤い鳥文学賞”はこの本の著者、岩崎京子さんに決まり、 『建具職人の千太郎』は作家と画家のダブル受賞となりました。

岩崎さんと父は大正11年生まれの同い年。
そして家は歩いて数分の距離というご近所さん。
そんなご縁もあって父は岩崎さんの作品に度々挿絵を描かせて頂いてきましたが、いよいよ人生も終盤という時にこのような賞を岩崎さんと共に頂けたことを家族で喜んでおります。
ありがとうございました。

授賞式と祝賀会が7月1日、池袋の自由学園明日館に於いて行われました。

忘れないうちに、当日の父のスピーチをこちらに載せておきたいと思いました。
実際はもっと長く話しておりましたし、数日経つ内に私の中で随分と変換されたようにも思いますが、概ねこのようなことを話しておったと記憶しております。

正直、この式の間、何度か涙腺が決壊しかかりました。

この日のこと、父母のこと、そして絵本についてなどなど、いろいろ感じ思うことがありますが、それはまた後日のんびりと書いていきたいと思っています。

以下、父のスピーチです。

〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜

くもん出版から電話がありまして、式の時に3,4分話せ、と言われたので、まあだいたいそれくらい話をさせて頂きます。

若い頃、僕はせいぜい22,23くらいまでしか生きられないだろう、と思っていました。
実際にそうだった仲間も大勢います。
まさか88まで生きようとは思いもしなかったのです。

くもん出版さんから岩崎さんの本の挿絵の依頼があり、その本が建具職人についてもものだと聞いた時に
岩崎さんと建具というものがどうにも結びつきませんでした。
岩崎さんのことだから、随分と調べられ、準備されたのだろうとは思いましたが、それでも結びつかなかった。
ところがなんと岩崎さんはご自分で組子を作ってらっしゃった。
それがなかなか上手く出来ていましてね。
これは本気なんだな、と思ったわけです。

僕が子供の頃には職人さんがまわりにも沢山いて、風呂屋に行くとそういう職人さんがどどいつをうなってたりしたもんです。
職人というのは真面目一方ではなく、色っぽいもんだったのです。
ですから出来上がった本を見た時に「もうちょっと絵に色気があってもよかったな」と、これは絵描きの弁です。
そう、もうちょっと色っぽくても良かった。

審査員の皆さんの顔ぶれを見ますと、この賞を頂けたのにはどうも絵の力だけではない別のものも働いているのかなあ、とも思います。

女房が入院していまして、「ほら、この本が賞を頂いたよ」と言いましたら、分かっているんだかいないんだか、女房が本をこう…、なでましてね。
僕としては分かっているんじゃないかな、とそう思いたいわけですね。

随分と貧乏をしまして、苦労をかけました。
それでも止めろとは言わずに絵を描かせてくれたことは、大層ありがたかったです。

自分にはまだちょっと時間が残されているようです。
なので、これからは墨絵調の絵にも挑戦して描いてやろうかな、と、こう考えております。

それではまたお目にかかることもあるかもしれません。
みなさん、ありがとうございました。


2010年7月1日
自由学園明日館にて
田代三善談
by contenta | 2010-07-05 11:38 | 徒然
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