引退。
ああ、そうか。
ついにこの日が来たのだと、一抹の淋しさと共に思った。
そしてやっぱり野茂選手はいつだって野茂選手たるのだ、そうも思ったのだった。
今年になってから楽天入りなども囁かれていた彼ではあるが、なんとなく、それはないのでは?と感じていた。
どうであれ、彼はアメリカで野球人生に幕を引く、そんな気がしていたのだ。
野茂選手は凛としている。
いつでもどんな時でも、キッパリと信念を貫く。
五月蝿い外野の、無神経な言葉には耳を貸さない。
他人に媚びない。
ドッシリと大地に根を張っていて、揺らぐ事が無い。
決して軸がブレない。
誇り高い。
これが近鉄の頃から野茂選手を見てきた私が持っている、彼のイメージだ。
希有な人物である。
だからこその、野茂選手だ。
ふと思ったのだが、もしも山際淳一氏がご存命だったら、今の野茂選手をどんな言葉で表現してくれたのであろうか。
ああ、こういう時だからこそ山際氏の文章をもう一度読みたい。
でも、それは叶わない。
しごく残念である。
時間はグングン流れて行く。
本気で望んで叶う事もあれば、叶わない事だってやっぱりあるものだ。
山際氏は亡くなり、野茂選手は現役を退いた。
でも野茂選手はあの生き方をこれからも貫くだろう。
あの凛とした姿勢、美しさは、きっと絶対に変わらない。
では、私は?
自問しながら、日々は続いていく。